金融広報中央委員会が2019年11月18日に公表した「家計の金融行動に関する世論調査」によると、単身世帯では2年連続して保有する金融資産額は1割を超える減少となりました。収入が減少したほか、株式などの有価証券の下落が大きく響いたようです。

単身世帯の減少率は2人以上世帯より高い

金融広報中央委員会が2019年11月18日に公表した「家計の金融行動に関する世論調査」によると、単身世帯が保有する金融資産残高は、平均で1059万円、中央値で300万円でした。2018年が平均で1234万円、中央値で350万円でしたから、共に1割を超える大幅な減少となっています。

金融資産を保有していない世帯を含めた場合、平均で645万円、中央値で45万円でした。同様に2018年の数値を見ると平均で744万円、中央値は50万円でしたので、やはり1割を超える大幅な減少と2人以上世帯よりも減少率は大きくなっています。

金融商品別の構成をみると、預貯金(郵便貯金を含む)は44.2%と前年より2.5ポイント増加と、2人以上世帯の減少と逆の動きになっています。

反面、生命保険は8.4%と前年より1.2ポイント減少、有価証券(債券・株式・投資信託)は、34.0%と前年より3.1ポイントの大幅な増加となっています。

一般NISAを保有している世帯の平均保有額は181万円と前年より13万円増加となっています。つみたてNISAや他の非課税投資制度の残高は公表されていません。

有価証券の価格変動による影響は大きい

金融資産保有世帯において、金融資産残高が1年前と比べ「減った」と回答した世帯は26.7%と2018年より1.7ポイント増加。一方、金融資産が「増えた」と回答した世帯は34.7%と前年より4.0ポイントの大幅な減少となりました。

金融資産資産残高の増減の理由は、金融資産残高が減少した世帯は、「定例的な収入が減ったので金融資産を取り崩したから」が44.9%と最も高く、2018年比では1.7ポイント増加しています。

次に高いのは「株式、債券価格の低下により、これらの評価額が減少したから」は、28.3%と前年比8.0ポイントの大幅増となっています。単身世帯は有価証券の価格の変動が、金融資産残高に与える影響は2人以上世帯より大きいようです。

また、2人以上世帯で多かった「耐久消費財(自動車、家具、家電等)購入費用の支出があったから」は、単身世帯では10.6%とあまり高くありません。

一方、金融資産残高が増加した世帯は、「定期的な収入が増加したから」が44.2%で最も高く、2018年比1.7ポイントの増加、「定期的な収入から貯蓄する割合を引き上げたから」が27.1%で前年比0.7ポイント減少となっています。残高を増やす鍵は、単身世帯も収入の増加にあるといえそうです。

金融資産の保有目的は、「老後の生活資金」が57.0%と最も高く、2018年比で1.9ポイント増加しています。次いで「病気や不時の災害への備え」が47.4%ですが、前年と比較して2.6ポイントの大幅な減少となっています。この2つが突出しているのは2人以上世帯と変わりませんが、2人以上世帯ほど他の保有目的との開きはありません。

元本割れを起こす可能性があるが、収益性が高いと見込まれる金融商品の保有については、「そうした商品を保有しようとは全く思わない」が61.2%と最も高かったのですが、2018年よりは2.3ポイント減少しています。

反面、「そうした商品についても、一部は保有しようと思っている」は27.4%と前年より1.7ポイント増加しています。収益性が高いと見込まれる商品=投資商品と考えれば、単身世帯のほうが投資に積極的といえるでしょう。

借入金額は増加している

借入金のある世帯の割合は、2018年より0.8ポイント増え19.3%でした。借入金のない世帯も含む全世帯の平均借入額は、前年より14万円減少して64万円でした。

借入金のある世帯だけに限ると、その平均額は前年より341万円と前年(436万円)より減少です。このうち住宅ローンは前年より87万円減少して180万円となっています。

反面、単身世帯は住宅ローン以外の借入が161万円あります。その残高は2018年より8万円しか減少していません。借入の目的で最も多いのが「日常の生活資金」で43.7%もあることを考えると、単身世帯の家計は2人以上と比較して厳しいと思われます。

老後の生活への心配は増加傾向

老後の生活については「非常に心配である」が53.8%と2018年より4.1ポイント増加、「多少心配である」は31.8%と前年より1.6ポイント減少しました。

心配であるとしている8割強の世帯では、その理由について「年金や保険が十分ではないから」が2018年より3.1ポイント増え57.9%、また「十分な金融資産がないから」も前年より3.4ポイント増え76.2%となっています。

騒がれた老後資金2000万円問題の影響は、2人以上世帯よりも大きく出ていると思われてなりません。

老後の生活費の収入源については、「公的年金」が2018年より1.6ポイント減少して59.2%、「就業による収入」は前年より3.0ポイント増え54.3%となっています。「企業年金・個人年金・保険金」は、前年比0.2ポイント増え30.0%でした。

就業による収入の割合は、2人以上世帯と同じく年々高くなっています。公的年金だけに頼ることの不安や、高齢者の働く意欲の向上が背景にあると考えられます。
(文:深野 康彦(マネーガイド))