夫婦のお財布を、皆さんはどう管理していますか。完全にまとめていたり、別々に管理していたり、ご家庭によって色々なケースがありますよね。お金の話はたとえ夫婦の間でもデリケート。
ささいなことで不満が溜まったり、ケンカの原因になったりします。税理士で現役モデルの日沢新によるお金に関する連載。今回は、家庭内のお財布をもめないように管理するテクニックをご紹介します。
「夫婦で別財布にしようと思うのですが」
先日、 Mさんという40代主婦の方から相談を受けました。
Mさん「うちは夫と息子の3人家族です。夫の給料と私のパート代(扶養の範囲内)で家計をやりくりするため、家族の財布を一つにまとめています。
ですが、息子が公立中から私立高校に入り、想像していた以上にお金がかかるようになりました。私が医療事務の資格を取ったので、もっと働ける病院に転職することにしました。
これから私の収入が増えるので主人も喜んでくれましたが、お互いにお財布を別にしたほうが良いかなとも考えるようになったんです。
ただ、これまで別々にお金を管理したことないから、それがいいのか悪いのかわからなくて……」
日沢「なるほど。最近では、別財布にしているご夫婦も増えているようですよね。夫婦間でお金をどう管理するのがベストなのかは、ケースによって変わってきます。今回は、Mさんご夫婦にピッタリの方法を検討しましょう」
夫婦の財布の管理方法とは?
日沢「夫婦間での財布の管理方法は、大きく分けて3つあります」
(1)夫婦の収入を一つの財布にまとめる(2)夫婦の財布を完全に別にする(3)夫婦の財布を一部だけ共有にする
Mさん「うちの場合は、これまで(1)だったわけですね」
日沢「そうですね。(1)のメリットは、世帯全体の収入が丸わかりとなり、貯蓄や節約がしやすいことです。デメリットは、管理をする方に負担がかかり、金銭的プライバシーがありません。お小遣いの金額など、ささいなことで不満が溜まったりします」
Mさん「それはあります。こっちは必死でやりくりしているのに『もっと小遣いを増やしてほしい』と言われ、ケンカになったこともありました」
日沢「(2)は、比較的、若いご夫婦に多いですかね。(2)のメリットは、夫婦間でも金銭プライバシーが守れるところです。デメリットは、自宅の光熱費などの共有費用について、どちらがいくら負担するかでケンカになったりします。
また、財布を完全に分けると、一緒に家計を考えるという意識が薄くなりがちです。
最後の(3)は、上記(1)と(2)の折衷案ですね。夫婦それぞれの稼ぎや口座残高のプライバシーは保ちつつ、一緒に生活費を負担することが可能です。
また、完全分離ではないため、共有財布を通じて夫婦の家計管理の意識も芽生えます。デメリットは、管理する側にとっては(1)と同じくらい手間がかかる点と、管理していない側にとっては変わらず不透明なものとなってしまう点です」
Mさん「なるほど。(2)はあまりうちにはむいてなさそうなので、(3)がよいかなと思います。でも、共有の財布の管理が大変そうで……。何より、どう作ったらよいのかわかりません」
日沢「そうですね。私も、Mさんには(3)が向いているかと思います。実は、クラウドシステムを上手く利用すれば(3)のデメリットを大きく解消できますよ」
クラウドシステムによる共有口座の管理法
Mさん「クラウドシステムって何ですか? 具体的に教えてください」
日沢「クラウドシステムとは、わかりやすくいうとインターネット上にデータを保存するサービスのことです。
その利用は幅広いのですが、今回はインターネット上に家計簿をつくるシステムを使用します。家計簿を自分の手書きノートやパソコン、スマートフォンに作るのではなく、インターネット上に作成します」
Mさん「なんか難しそうですね。インターネットにおいた家計簿に、通帳とかレシートを打ち込むということですか」
日沢「そんなイメージです。でも、銀行の入出金情報やクレジットカード情報を連動させれば、チェックするだけで家計簿が作成できます。
また、現金払いのものでも、レシートをスマホで撮影するだけで連動できるサービスもありますから、手書きなんかよりよほど楽ですよ」
Mさん「それはすごいですね。でも家計簿の話と財布の話が、どうつながるんですか?」
日沢「つまり共有財布をインターネット上に作り、クラウド家計簿を通じてお互いに管理するんです。ご主人もMさんもクラウド家計簿にアクセスできるようにしておけば、そこで通帳残高や生活費の支出記録をお互いが常にチェックできるというわけです。
また、クラウド家計簿とは別で自分の口座や財布を管理していれば、夫婦でも財布を別にしたまま生活できます」
Mさん「なるほど。具体的にどう進めたらよいのですか?」
具体的な導入の仕方とは
日沢「やることは全部で5つです。最初の導入は少し手間がかかりますが、乗り越えたらぐっと楽になりますよ。手順は以下です」
(1)夫婦共有の銀行口座、クレジットカードを用意する
まずは、共有用の財布となる銀行口座を用意しましょう。三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行、もしくはネット銀行の口座でネットバンキングを契約します。
共有口座用のクレジットカードは必ず必要ではありませんが、あれば家計簿の作成がより楽になります。新たにカードを作るのは手間なので、使用していなかったクレジットカードの引き落とし先を共有口座に変更するだけでもOK。
(2)クラウド家計簿の申し込みをする
Moneytreeや家計簿マネーフォワード、Zaimなど、通帳やクレジットカードが連携できるクラウド家計簿にアクセスして登録しましょう。登録の際、パスワードの設定などもあるので、絶対に忘れないようにしましょう。また、サービスによっては多少手数料がかかることもあります。
(3)銀行口座やクレジットカードを、クラウド家計簿と連携。いつでもオンラインで見られるようにする
(1)で作った銀行口座やクレジットカードを、(2)の家計簿に連動します。クラウド家計簿側で表示されていれば成功です。逆にこの辺りでつまずきそうな方は、パソコンに詳しい家族がいたら頼るとよいでしょう。
(4)生活費の支払先を共有用口座やクレジットカードに変更する
電気代やガス代など共有の支出を(1)の口座やクレジットカードから引き落としされるように手続きします。このとき、月でいくらくらい生活費が必要か軽く計算しておきましょう。
(5)以後、家計簿を運用する
ここまでやれば準備完了。
日沢「残高不足にならないよう、毎月いくらお互いに入金するか確認して、定期的に入金しましょう。口座からの引き落としやクレジットカードの情報が連動されていますので、それをスマホなどで確認していきます。空き時間などで簡単にできますよ」
Mさん「なるほど。私はネットが苦手だから、導入部分や操作方法については主人や息子に手伝ってやってもらおうと思います」
日沢「それがいいですね。ただし、必ず安全な環境で、信頼できる人と作業してください。特に怪しいフリーwifiを利用したりするのは大変、危険ですからご注意ください。また、各サービスの具体的な導入方法は、各企業のHPをご参照ください」
Mさん「わかりました。ちなみに先生、生活費とは別に、家計の貯蓄をしたいときはどうしたらよいのでしょうか」
日沢「実はこのシステムを使って、貯蓄用の口座を作って連携することもできます。生活費用の口座と貯蓄用の口座二つの残高がクラウド家計簿で見られますから、夫婦で毎月いくら積み立てるかを決め、お互いにチェックすることができます」
Mさん「口座をもう一つ作るんですね」
日沢「はい。離婚原因の中には、貯蓄用口座の管理を片方に任せていたら、ほぼ使い込みされていたなんていう話もありますから。双方で監視すれば、そういったリスクも防げますよ」
注意すべきこと
Mさん「銀行やクレジットカードって共有の口座は作れませんよね。どちらの名義で作った方がよいのでしょうか」
日沢「日本では夫婦共有の口座が作れませんから、どちらの名義で用意しても大丈夫です。
ただ注意として、例えばご主人名義の口座で作った場合、どうしてもご主人の口座であるという意識が芽生えてしまいます。ですので、あくまで共有用口座であるということ、その口座は夫婦一緒に管理しているという意識を徹底してください」
Mさん「わかりました。なんとも便利な時代になりましたねぇ~」
日沢新(ひざわ・しん)◎税理士。1987年生まれ。2013年に、税理士の国家資格を取得。税理士事務所NEO FRONTIER TAX OFFICEの代表税理士(
https://hizawa-tax.com/)。おもに個人や中小企業、そして相続に関する相談に乗っている。身長185cm、70kg、体脂肪率8%。日々のジムトレーニングで、鍛え抜かれた肉体美を目指す。好きな言葉は「黄金の精神」。
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