家の資産価値は「いくらで貸せるか」「いくらで売れるか」という指標で測られます。しかし、知っておきたいことが1つあります。それは家賃と売買価格は必ずしも比例するとは限らないということです。

売買価格は住宅地としての人気度、家賃は都心や駅からの距離で決まる

家の資産価値は「いくらで貸せるか」「いくらで売れるか」という指標で測られます。しかし、知っておきたいことが1つあります。それは「家賃と売買価格は必ずしも比例するとは限らない」ということです。

家賃は高くとれるけれど売買価格は安い、あるいは売買価格が高い割には家賃がとれない、ということがあります。

たとえば東京でいうと、世田谷区や目黒区など、山手線の西側は住宅地として人気がありますから、墨田区や台東区といった東側よりも、高い値段で売買されています。

しかし、家賃自体は都心や駅から近い物件では、どちらもそう大きな違いはありません。これは、売買と家賃とは、価格の形成メカニズムが違うために起こります。

端的に言うと、売買価格は住宅地としての人気度で決まり、家賃は都心や駅からの距離で決まります。

賃貸物件を借りる人は便利さに対して家賃を払います。生活環境よりも通勤通学への利便性が優先されます。場所によるプレミアは多少ありますが、住宅地の人気度よりも、都心に近ければ家賃も高く、遠ければ安い、駅からの距離も同じ傾向があります。

そのため、賃料は高く取れても、売却価格は大きく下がる、ということがあるのです。

一方、売買では街の雰囲気や世間的なイメージも価格の中に含まれます。買い手は、環境面も含めた総合的な要素に対してお金を支払います。この場合、利便性よりも住宅地としてのブランドが優先されることがあります。

たとえば渋谷区松涛などは、駅から15分以上離れても、都内トップレベルの価格を維持しています。高級住宅地になればなるほど、賃貸に出すと住宅ローンの返済額よりも家賃が低い、という状況になります。つまり、賃料収入はあまりとれないけれども、売るときもそこそこ高い値段がつきやすいのです。

その物件は「売るときに有利」か「貸すときに有利」か?

自分が買おうとしているその物件は、売るときに有利なのか、あるいは貸すときに有利なのかを知っておくことは、将来のリスクを下げることにつながります。

たとえば売るときに有利なら、早めに繰り上げ返済して残債を減らしておこうとか。貸すときに有利なら、賃料収入で賄えるから繰り上げ返済はしないでその資金は別で運用しようとか。

もちろん、自分のライフスタイルにとって大切な環境が得られる、満足感が得られる、ローンも支払っていけそうだと自分が納得できるならば、あまり気にすることはないかもしれません。

しかし、リスク対処の上で必要なのは、想定されるリスクを知り、マイホームの活用方法やリスク回避のための選択肢を理解し、心の準備をしておくことです。
(文:午堂 登紀雄(マネーガイド))