資産運用で大事なことは、方法以前に目的の明確化、具体化です。もし、老後の生活のための運用なら、老後に必要な金額、そして自分で用意すべき自主年金の金額、そのために現役中に投入できる資金額の把握してください。そこから人生の必要収益率が導き出されます。どのくらい増やすべきか?と収益率という指針で把握することが資産運用のスタートなんです。

老後にいくらのお金が必要かというゴールを明確に

資産運用として何をしたらよいかを探るまえに、投資の目的を具体的にしておきましょう。老後にいくらのお金が必要かというゴールの明確化です。

老後資金-公的年金=自主年金

老後に必要な全体金額から、他人が用意してくれるお金(公的年金、企業年金)を引いた残りの金額が、自分で用意すべきお金(自主年金)です。現在これから退職する世代の人たちが必要としている老後の自主年金の額は2000~3000万円というアンケート結果があります。それから推測できる将来の自主年金額は、物価上昇率3%を前提とすれば、30年後には約5000万円です。

しかし、これは感覚的な期待値なので、あまり正確ではありません。次に積み上げて計算してみましょう。現在の日本で、リタイア後の夫婦が暮らせる月の生活費が平均で22万~23万円と言われています。その12カ月の30年分は8280万円で、そのうち4割が公的年金でまかなわれるとしたら、その6掛けは4968万円。やはり約5000万円が必要な自主年金の額となります。

生活の資金と夢の資金

いずれにしても、お金の心配をしないで人生をまっとうするには、5000万円くらいの自主年金は必要なようです。その上で、老後をもう少し前向きにとらえられる人はリタイア後の夢や願望があるでしょうから、その費用も自主年金に追加して考えてください。

たとえば海外に移住したい、世界中を旅して回りたい、社会貢献のための活動をしたいなどの必要な資金額を見積もって、老後の生活費に加えておくのです。老後の必要生活費プラス夢の実現資金で、所要金額は5000万円プラスアルファとなることでしょう。

運用の指針は必要収益率

自主年金の必要最低額が5000万円であるとすれば、それを運用していくにあたって、もっと実践的な意味を持つのが「必要収益率」というキーワードです。あなたがリタイア時に5000万円の自主年金を作るために、年率で何%の運用をしたらよいか?という課題に数字で答えを持つことです。

たとえば、手持ち資金を50万円持っている35歳の世帯主が、老後のために毎月3万円をつみたてながら、30年後に5000万円の自主年金を作るのに必要な収益は?と問われれば「その人の必要収益率は8%です!」と明確な運用指針が与えられます。

8%という指針を持たずに「65歳で5000万円」だけを唱えて30年間貯め続けるのは、余りに遠い道のりです。現在の自分の自主年金作りが成功しているのか、軌道をはずれているのか、それを判断するために必要収益率を持っておくことをおすすめします。

まずは金融電卓でチェック!

自分の老後の必要資金額を把握するとともに、自分の人生を赤字にしないための必要収益率を把握しておいてください。なお、この利回り計算は複利運用を前提としていますので、市販の電卓では計算できません。

簡単に計算するツールとしてモーニングスター社の金融電卓があります。現在の自己資金、老後の必要自主年金額と老後までの年数、そして老後のために積立てられる月額を把握してから、このサイトで自分の必要収益率をはじき出してください。その数字があなたの運用のガイドラインになります。
(文:北川 邦弘(マネーガイド))