結婚難民になる前に……(写真はイメージです)
 “親離れ”という言葉がありますが、婚活中の30代、40代、50代の中に、これができていない方たちがとても多く見受けられます。また、そういう方の親は、“子離れ”ができていません。 
 婚活ライターをしながら、仲人としてもお見合い現場に携わる筆者が、目の当たりにした婚活事情を、さまざまなテーマ別に考えてゆく連載。今回は、『いつまでも親離れ子離れできない人たちの婚活事情』です。

県内の男性と結婚してほしい

 一夫さん(51歳、仮名)は、九州の出身ですが、都内の大学を卒業後は都内のメーカーに就職をし、そこからずっと関東圏内での暮らしをしてきました。現在は、埼玉に一戸建てを購入し、東京の大手町まで通勤しています。
 51歳という年齢ですが、結婚したら子どもを授かることを望んでおり、お見合いを申し込むのは30代後半から41歳くらいまでの女性でした。
 ところがアラフォー女性で、“できることなら最後のチャンスで子どもを授かりたい”と思っている方たちは50代の男性は敬遠して、なるべく年の近い男性と結婚をしたがります。それは、稼ぎ手になる男性にできるだけ長い年月働いていてほしいからです。
 こうした事情で、子どもを望む50代男性は出産可能な年齢の女性とお見合いが組めず、みなさんがとても苦労をしているのです。
 ところがある時、一夫さんがお申し込みをかけた九州在住の敦美さん(37歳、仮名)から、お見合い受諾のお返事がきました。お写真を見るととても可愛らしい女性だったので、一夫さんは大喜びでした。
「コメント欄に『同郷ですね』とひと言入れたのがよかったのでしょうか。親近感を持ってくれたんでしょうね。お見合いに行ったら、帰りに実家にも寄って、父や母の顔を見てこようと思います」
 そんな話をうれしそうにしていました。
 そして、お見合いの日程調整を始めたのですが、数日後、突然女性の相談室から、お見合いキャンセルの連絡がきました。その理由がこうでした。
「敦美さんの親御さんが、関東圏にお嫁にいくことを反対しているので、今回のお見合いはキャンセルにしたい。できたら県内で相手を探してほしいと言っているんです」
 敦美さんのプロフィールには、“男性は同じ県内の方限定”などとは書かれていませんでした。そして、自分の意思で受けたお見合いだったはずです。
 それなのに、37歳のいい年をした女性が親に言われたことに従って、いったん受けたお見合いをキャンセルする。
 そもそも九州は、独身男性不足で婚活女性たちは、お相手探しにとても苦労しています。九州では探せず、関西方面にお見合いに行く女性もいるほどです。
 そんな状況なのに、ご自身が住んでいる県内限定で結婚相手を探したら、見つけることはとても難しくなります。誰の結婚か。親の結婚ではなく、ご自身の結婚なはずです。

国際結婚ができない理由

 40代後半、50代の男性で、「お子さんが欲しい」と言っている男性たちが、日本人女性とのお見合いを組むのはとても難しいのは前述しました。そこで仲人としては、「国際結婚も視野に入れませんか?」と1度はすすめます。
 ところが、9割方の男性が、「国際結婚は考えていません」とおっしゃるのです。
 一夫さんもそうでした。国際結婚を考えられない理由は、こうでした。
「中国、タイ、フィリピン、ベトナムなど、アジアの国の女性と国際結婚をするなら、親が “親子の縁を切る”と言っています。反対を押し切って結婚をして、子どもを授かったところで、祖父母から認めてもらえない孫はかわいそうだし、私たち夫婦も不幸になるだけです」
 本当にそうでしょうか?
 結婚は当人同士の問題です。20歳を過ぎて成人したら、親の許可がなくとも婚姻届は提出できるのです。当人同士がしっかりと関係を築きあい、そこに生まれてきた子どもにたくさんの愛情をかけて育てるなら、その子どもは幸せでしょう。祖父母に認めてもらえなくても、孫は自分を不幸だと感じないはずです。
 国際結婚に関しては、本人よりもとにかく親御さんが反対をします。昭和の前半に生まれた親たちの頭の中には、「結婚するなら日本人と」という考えが強く根づいている方たちが多いのです。
 そういえば、テニスの大坂なおみさんのお母さまのご両親も、ハイチ系アメリカ人のレオナルドさんとの結婚に大反対をしたとか。2人は反対を押し切って駆け落ちしたそうです。絶縁の時期もあったようですが、今や祖父母にとってなおみさんは“自慢の孫”。お爺さまは、ワイドショーのインタビューで、なおみさんがお寿司好きなことを目尻を下げてお話ししていました。

42歳男性の実家暮らしの理由

「これから本腰を入れて婚活をしようと思っているのですが、実家暮らしというのは、(婚活に)デメリットになりますか?」
 面談にやってきた巖さん(42歳、仮名)が、私に聞いてきました。
 実家で暮らしている男性を、よく思わない女性はとても多いのです。なぜなら実家暮らしの男性は、炊事洗濯を母親にやってもらっているために、結婚しても、家事を“女性がやって当たり前”と思っている人が多いから。
 もちろん、メリットもあります。実家暮らしの男性は、家賃がかからないぶん、無駄遣いをしなければ貯金ができます。ただ、多くの女性が“実家暮らしの男性は、自立していない”と見てしまいます。
 巖さんの年収は、850万円。ひとり暮らしをしても十分にやっていける金額を稼いでいました。
「なぜ実家から出ないのですか?」と聞くと、こんな答えが返ってきました。
「母親が、私が家を出てひとり暮らしをするのをとても嫌がっているんです」
 42歳の息子を手放せない母親。子離れができていません。
 人間、年を重ねるほどに心細くなっていきますから、こういう母親は、息子が「結婚する」と言い出した途端、どんな女性を連れてきても大反対をする傾向にあります。さらに、“母が嫌がっているからひとり暮らしをしない”という息子も“親離れ”ができていませんよね。

親も子も自立してこそいい関係が築ける

 親がいなかったら子どもは、この世の中に誕生しません。生まれてから、愛情を注いでもらい大きくなる。お金をかけてもらい教育を受ける。親を大切にする気持ちは、決して忘れてはいけないものだと思います。
 でも、成人して仕事を始め、自分でお金を稼ぐようになったら、親を大切にする気持ちを持ちつつも、ひとりの人間として自立することも大事ではないでしょうか?
 また、親も子どもは自分の所有物ではありません。成人したら、ひとりの人間として尊重し、自立を促し、自分から切り離していくのも親の務めです。
 親も子も、自立してこそいい関係が築けるのです。親離れ、子離れができていない親子が結婚難民となっていきます。
鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。公式サイト『最短結婚ナビ』http://www.saitankekkon.jp/