50代は仕事は定年退職に向けての仕上げの時期と言える反面、老後を迎えるための準備期間といえます。この準備期間をいかに有効に活用するかによって、老後の生活は180度変わってしまう可能性があるのです。

50代でやっておきたい老後の準備とは? 自分自身のこと

老後なんて先のことと思われていたのが、50代になると現実味を帯びてきます。さらに、歳を重ねるごとに老後のカウントダウンが1歩進むのですから、現実から目を背けるのではなく、50代の老後の助走期間を有意義に活用しなければなりません。

老後の準備には何から始めたらよいのでしょうか。残念ながら順番にというわけにはいかず、いくつかを同時並行して準備していかなければなりません。

たとえば生活費。総務省が公表している2018年の「家計調査報告(家計収支編)」によれば、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の実収入は22万2834円、消費支出は26万4707円となっています。

毎月4万1872円が不足しており、年間にすれば50万2464円を貯蓄を取り崩すなどして生活していることになります。

収入より支出の方が多いのですから、退職するまでに資産の山を高く築いておく必要があります。ただし、退職後も現役時代と同じようなライフスタイルで生活費を使用していると、いくら資産の山を高くしてもあっという間に老後のために準備しておいたお金は底を尽いてしまうでしょう。

現実的なことを考えれば、資産の山を高くする「資産運用」と並行して生活をコンパクトにするダウンサイジングを行っていく必要があります。

生活のダウンサイジングに焦点をあてれば、住宅ローンや家のリフォームをどうするか。人によっては住まいをどうするのかも考えておく必要もあるでしょう。老後は現在の家に住むのか、田舎にUターンやIターンという選択肢もあるからです。

また、加入している生命保険の見直しを行う必要があるでしょう。老後を見据えれば保障の内容は、死亡保障から生きている時の備えとして医療保障重視になるからです。

わが国は世界トップクラスの長寿国ですが、昨年あたりから人生100年時代という考え方が認知されるようになってきました。令和元年の敬老の日に100歳以上の人が7万を初めて超えたのですから、長生きに備える必要性は高まっているといえるでしょう。

長生きに対する備えはお金だけではありません。ピンピンコロリなら理想ですが、実際はそうもいかないようです。健康寿命と平均寿命には男女ともに10年前後の開きがあるのです。健康に留意することも立派な老後の準備といえるでしょう。

老後を迎えるまでに行う親と子どものこと

前段までに述べたことは、配偶者を含めた自分自身のための準備といえるでしょう。しかしながら、50代は夫婦の親のこと、自分たちの子どものことも考えなければならない板ばさみの状態であることを忘れてはなりません。

親、両親が健在であれば、両親の面倒をどうするのかを考えなければなりません。両親が健康であれば問題は少ないのですが、介護が必要な場合、だれがどのように介護を行うのか、また介護費用はどう捻出するのかも考えておく必要があります。

注意点だけ先に述べておげは、親の介護費用はまず親のお金(資産)から捻出すること。親の資産等が不足して、初めて自分たち(兄弟姉妹がいる場合は不公平感が生じないように)が費用を負担するようにしましょう。

50代ともなれば教育費はそろそろ終わりか、あるいは終わりの時期が見えてくるころですが、子どもに資産を食いつぶされて老後の準備がままならないというケースもありえない話ではありません。

いわゆる「パラサイトシングル」の問題があるからです。簡単には解決できない問題ですが、わが子がパラサイトシングルになるかもしれないと意識しておくだけでも違うはずです。

老後を迎える助走期間中にやっておかなければならない、あるいは考えておかなければならないことをざっと列挙しました。ざっと挙げただけでもこれだけあるのですから、順番にではなく、並行して行わなければならないことが理解できたかと思います。
(文:深野 康彦(マネーガイド))