映画を見に行って、とてもつまらなかったとします。この場合、あなたが損した金額はいくらでしょうか? 映画代の1800円? いえ、違います。1万2000円の損です。

軽視しがちなタイムパフォーマンスを意識してみよう

映画を見に行って、とてもつまらなかったとします。この場合、あなたが損した金額はいくらでしょうか? 映画代の1800円? いえ、違います。1万2000円の損です。

年収500万円のサラリーマンの時給を約2500円とします。仮に自宅から映画館までの往復が約2時間なら、上映時間の2時間と合わせて合計4時間を費やしていますから、2500円×4=1万円。それに往復の交通費を加えると、1万2000円以上の損というわけです。

私たちはお金を投下するとき、コストパフォーマンス(費用対効果)を重視します。お金は減れば目に見えますが、時間は見えないので、どうしても軽視してしまうのでしょう。もちろん、コストパフォーマンスとタイムパフォーマンスは、それぞれが置かれた立場や状況、社会的なステージによっても異なります。

たとえば、収入が少ない人にとっては、相対的に時間よりお金の優先順位が高くなるし、収入が多い人にとっては、お金より時間の優先順位が高くなる、ということがあるでしょう。しかし、お金は失ってもまた稼げばいいわけですが、失われた時間は取り戻すことができません。

そこでこれからはタイムパフォーマンス、つまり“時間対効果”についても意識してみることが大切です。

時間対効果を上げるには、見切る勇気を持つことが大事

タイムパフォーマンスの考え方でいくと、「迷わない」「決断力の速さ」「見切る勇気」が重要になってきます。とにかくあれこれ迷うよりも、まずはやってみることです。その場合、自分なりに判断基準というか、仮説を持っておくと意思決定スピードが上がります。

たとえば、食事する店を選ぶとき、メニューの写真がしっかりしていれば、すぐに飛び込みます。というのも、飲食店にとっての商品は「料理」ですから、そのプレゼンテーション手段であるメニューの写真を丁寧に撮っているということは、自らの商品を大事にしているということ。

そんな店の料理ならきっとおいしいだろう、という仮説です。それで入ってみて、雰囲気が悪かったり、味が美味しくなかったりすれば、すぐに出て別の店に行けばよいのです。そして自分の仮説を修正していきます。それを繰り返すと瞬時の決断でも、大きく外さない意思決定ができるようになります。

映画やレンタルDVDも、ちょっと見てつまらなそうだったら、見切ってパッと止めます。「お金を払ったからもったいない」と言って最後まで付き合うのは、お金と時間のダブル損になります。であれば、損失はお金だけに食い止めるほうがトクというものです。

仕事も時間対効果を意識することで成果が上がる

仕事も同じく、完璧な準備などありえません。どんなに周到な準備をしていても、走り始めてみると、全く別の方向に転換しなければならないことはよくあります。軌道修正を迫られる可能性があるなら、準備や計画に必要以上に時間をかけるのではなく、見切り発車でもよしとする姿勢を持っておくことです。

新規事業はまさにその繰り返しで、計画通りいくほうが珍しいものです。だから私は、新しいビジネスを立ち上げるとき、事業計画書なんて作ったことはありません。キャッシュフローを把握して、資金ショートさえ起こさなければ、走りながら軌道修正したほうが、結果として儲かるようになります。

逆に事業計画書を推奨するコンサルタントや起業セミナーは、全く信用していません。だってそんなものは、ほぼムダになるからです。

1年間を調査と計画に費やし、次の1年で一巡させるようなのんびりとした時間軸ではなく、1日でプランニングし、1週間で一巡させるのです。それによって、前者の52倍の経験値が得られます。

他人が1年間で経験することを、自分は1週間で経験することができます。他人が1年で1回サイコロを振るのなら、自分は100回振るのです。
(文:午堂 登紀雄(マネーガイド))