サラリーマン家庭は必見!税金は抑えられる(写真はイメージです)
 11月になると、日本全国のサラリーマンが会社に年末調整の書類を提出します。よくわからず、いままでなんとなく書いて提出していた方は、実はとんでもない損をしていたかもしれません。さらに、確定申告をするともっと税金が返ってくることもあるのです。
 
 税理士で現役モデルの日沢新によるお金にまつわる連載。今回は、『サラリーマンが見落としがちな年末調整と確定申告のポイント』をやさしく解説します。

年末調整って、そもそも何?

 Kさんという40代の女性から相談をうけました。
Kさん「夫はサラリーマンですけど、会社の年末調整で書類を準備しています。いつも来た書類を適当に書いて提出しているんですが、これって何かまずいですか?」
日沢「まずいといいますか、年末調整を適当に済ませてしまうと、Kさん夫婦が税金面でとても損をする可能性がありますね」
Kさん「損!? それは大変!! そもそも年末調整って具体的に何なのでしょうか?」
日沢「年末調整は、サラリーマンや公務員が税金を計算するための手続きです。毎月お給料から天引きされている所得税、実はこれ税金の仮払いなんです。
 税金は給与以外も含めた、年間の合計収入金額で確定するため、仮払いしてきた金額と本来支払うべき税金の過不足を年末に調整するから、年末調整というのです。
 本来、自分で計算して確定申告しなければいけないところを、会社が全て計算し、税務署や市区町村に報告までしてくれるという便利なシステムですよ」
Kさん「会社が個人に代わって税金計算をして報告までしてくれる便利なシステムなのに、なぜ税金面で損をしてしまうんですか?」
日沢「会社としては、従業員からいただいたデータをベースに税金を計算するからです。例えば個人で生命保険料を支払っていた場合、年末調整で生命保険料控除が受けられ、税金が下がります。
 それを報告しなければ、会社としては把握できないため、生命保険料控除なしで計算せざるを得ない。
 でも大丈夫、まだ間に合います。今回は年末調整で間違えやすかったり、見逃しやすかったりするポイントについて、しっかりと説明しますね」

控除を制する者は、税金を制する

日沢「突然ですが、Kさんは所得控除という言葉をご存知ですか?」
Kさん「聞いたことはありますが、詳しくはわかりません」
日沢「税金を計算する際に、条件を満たせば控除できる金額のことです。実は税金を抑えるポイントは、この所得控除に漏れがないか確認することなんですよ。全部で14種類ありますが、特に間違いの多い3つのポイントを教えますね」
(1)障がい者のご家族がいれば控除できる【障害者控除】
 本人もしくは、生計を一にする親族(専門用語で、“養っている家族”のことです)に障がいがある場合には「障害者控除」が受けられます。この規定は年齢による制限がありません。
 また「障害者手帳」がなくても、寝たきりの高齢者がいる場合などには、各市区町村の福祉課が発行する証明書があれば適用が受けられます。
(2)配偶者の年収が少し高くても配偶者の控除は受けられる【配偶者特別控除】
 配偶者が年間150万円以上(去年までは103万円)稼ぐと扶養から外れると考えがちですが、実は年間201万円以下なら配偶者特別控除という規定を受けられます。
(3)仕送りで暮らす家族がいれば扶養となる【扶養控除】
 生計を一にする親族であれば、一緒に暮らしていなくても扶養控除が受けられます。例として、仕送りだけで暮らしている子や親ですね。仕送りを使わず、年金で暮らしているようなケースは生計が一とは認められません。
日沢「個別の細かい規定や控除額は省略しますが、こんなところですね」
Kさん「そうなんですね。参考になります」
日沢「あと、KさんはiDeCoという商品をご存知ですか?」
Kさん「イデコですか? それはなんでしょうか」
日沢「iDeCoはよく銀行などで販売している、自分で年金を積み立てる商品ですが、実はこれも所得控除の一種なんです。正確には、個人型確定拠出年金といいまして、60歳未満であれば加入できます。支払った全額が所得控除でき、かつ積み立てもできるという画期的な商品です。
 同じ金額を貯金するより所得控除した方が節税になりますよね。ただし積立額は60歳まで引き出せないのがネックで、企業やお勤めの状況で加入資格や最大掛金が異なります。月々5,000円と少額からでもはじめられますので、ぜひ検討してみてください」
Kさん「そうなんですね。銀行に聞いてみます」

さらなるテク!確定申告をして税金還付を!!

日沢「ここからはさらなるテクニック、年末調整では受けられない所得控除についてです。これには、確定申告が必要となります。確定申告というと面倒だと思うかもしれませんが、税金がさらに返ってくるチャンスですので、必ずチェックしましょう」
(1)家族全体の医療費を集計してみよう【医療費控除】
 医療費控除は、1年間の医療費が10万円(保険金控除後)を超えていれば適用できます。これは本人だけでなく生計が一の親族の合計金額です。歯の治療や入院等で多額の出費が出た場合には、必ずチェックしましょう。美容整形ではなく、治療のためであれば対象となります。
 また、医療費合計が10万円を超えていなくても、セルフメディケーション税制といって、一般の市販薬などが年間12,000円を超えていれば医療費控除が受けられます。家庭内の置き薬は1年でまとめ買いしたほうがトク、ということですね。
(2)ふるさと納税をうけよう【寄付金控除】
 ポータルサイトから自治体に寄付すると、寄付額のうち一定額を控除できます。返戻品もあったりしますし、ぜひチェックしてみてください。最近は、ワンストップ特例という、年末調整でふるさと納税が受けられる便利なシステムもあります。
(3)災害や事件に巻き込まれたら確認しよう【雑損控除】
 災害・盗難・横領で家庭用財産が損害を受けた場合に受けられます。保険金額以上に損害を受けていれば、その損害額を控除できます。ちなみに、詐欺被害は対象外なのでご注意を。
Kさん「全然知らなかったです。確定申告っていつまでに、どうやればいいんですか?」
日沢「確定申告は翌年2月16日から3月15日までですが、実はこういった還付申告(税金が戻ってくる申告)は、翌年1月1日から5年以内であれば手続きできます。申告先は、お住まいの最寄りの税務署です。実は今年からスマホでも確定申告できるので、そちらも利用検討しましょう。(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/smart_shinkoku/index.htm
 申告が完了したら、税務署が確認したのち指定した口座に税金が還付されますよ」
Kさん「言われるがままに税金を払うのではなく、チェックしていけば、節税できるということですね。夫に話してみます。ありがとうございました」
※ 平成30年11月末時点の法令に則り記事を執筆しています。
日沢新(ひざわ・しん)◎税理士。1987年生まれ。2013年に、税理士の国家資格を取得。税理士事務所NEO FRONTIER TAX OFFICEの代表税理士(https://hizawa-tax.com/)。おもに個人や中小企業、そして相続に関する相談に乗っている。身長185cm、70kg、体脂肪率8%。日々のジムトレーニングで、鍛え抜かれた肉体美を目指す。好きな言葉は「黄金の精神」。