個人型確定拠出年金に注目する人も増えて、資産運用が身近になっています。自分の適性を客観的にとらえて、資産運用が向くのか、向かないのかを5つのポイントから分析し、改めて考えてみましょう

資産運用に向く人・向かない人、それぞれの特徴とは?

資産運用の相談をしていると、資産運用に向く人・向かない人がいることに気付きます。最初からセンスのある人、少しずつ上達する人、勉強しても上達しない人、そもそも向かない人。色んな人がいますが、次の5つのポイントから分析できます。

1.家計状況
2.メンタル
3.育った環境
4.お金の好き嫌い
5.行動力

「家計状況」の特徴

▼資産運用に向く人は「良い金銭感覚の持ち主」家計管理が上手な人とは、言い換えれば「良い金銭感覚を持つ」ということです。収入が多くても少なくても、支出の管理をしっかり行っていて、収入の一部を先取り貯蓄をして、残ったお金で生活するというスタイルが定着しています。収入が多い方が資産運用に向くのでは?と思われがちですが、収入が多くても毎月コツコツと貯蓄する習慣がなければ資産運用には向きません。収入が少なくても毎月コツコツと貯蓄ができていれば、その内の5000円からでもスタートできます。つまり収入の多寡ではなく、「先取り貯蓄の習慣の有無」が重要ということです。

また、金銭感覚の良い人は、価値と値段が一致したもの、もしくは価値より値段が低いものを買うので、高値掴みをしたり、損をすることが少ないものです。このような金銭感覚が、資産運用の世界でも、情報や広告、営業トークに翻弄されないという所に役に立ってきます。

▼資産運用に向かない人は「コツコツと先取り貯蓄ができない」よく、「そもそも資産運用に回すお金すら貯まっていない」と言う人がいますが、資産運用はコツコツとお金を貯めることができない人がやれば、ギャンブルになってしまいます。資産運用の手法には、安く買って高く売るといったタイミングを見て売買し利益を得る方法と、毎月一定額を積み立てるようにコツコツと長期に渡り投資していく方法とがありますが、後者の毎月一定額の積立投資をベースとすることが資産形成には大切なことです。また、「貯蓄」というクッションがなければ資産運用はおろか、日々の生活から結婚や子育て、住宅ローンを組むことなど、お金に関する全てにおいて「守り」が不足していることになります。

「メンタル」の特徴

▼資産運用に向く人は「節約が上手」例えば、節約が上手な人は、自分の欲望や感情を上手にコントロールできる強いメンタルを持っている人と言えます。資産運用はお金が増えたり減ったりすることで、常に自分の中の欲望や恐怖といった感情をコントロールする必要があるので、メンタルが弱いと判断も鈍り、思わぬ大損や利益を取り損なうことがおきます。

▼資産運用に向かない人は「周囲の意見に流され自己判断ができない」感情が不安定な人は、利益が出ても損が出ても、オロオロと落ち着かなくなったり、すぐに頭に血がのぼり適正な判断ができなくなります。更に自己判断ができないと、周囲の言葉や情報に流されやすくなり、自己責任で資産運用ができなくなります。

「育った環境」の特徴

▼資産運用に向く人は「お金の話ができる環境と良きアドバイザーの存在がある」自営業者や経営者など、景気に影響される職業についていると、リアルに景気を感じることでしょう。また、そのような親も持つと、家庭でも「お金」や「景気」の会話が普通になされますので、「お金」に対して多様性のある感性が身に付きやすい環境で育つことになります。「お金」に対する考え方が柔軟なので、「リスクを取る」ことのメリット・デメリットを考えて、自分で考えて行動できるようになります。家族や周囲に良きアドバイザーがいるのも特徴です。

▼資産運用に向かない人は「安定志向」代々、公務員や会社員という家庭で育った人は、毎月安定した収入を得て生活するといった環境の中で育っていますので、お金が増えたり減ったりという「不安定」なことに慣れていません。家族や友人に資産運用することを止められたり、理解してもらえないことも少なくないです。投資は「安定」が何より大事という人には向かない世界です。景気に左右されない生活を送っていれば、景気やマーケットに鈍くなるのは仕方ありませんので、自分の理解できる範囲内で景気動向を掴んでいく必要があります。例えば、主婦なら、日々の買い物から食品や日用品の価格動向から、旅行好きなら、外国人の動向や為替から景気を察知することができるでしょう。

「お金の好き嫌い」の特徴

▼資産運用に向く人は「お金が好きな人」「お金が好き!」と堂々と言える人は、「好きこそ物の上手なれ」ということわざのように、人は好きなものに対しては熱心に努力するので、上達が早いということが言えます。特に知識や経験が必要な資産運用の世界では、お金が好きでなければモチベーションが持続しません。資産運用が上手な人は、ワクワクした気持ちで楽しそうに取り組んでいます。

▼資産運用に向かない人は「お金に無頓着な人」反対にお金に興味が無ければ無頓着になり、資産運用を始めたとしても放置し、「塩漬け」状態になります。また、「お金は汚い、トラブルの元」と思っている場合でも、お金を持つこと、増やすことに抵抗があるため資産運用には向きません。

「行動力」の特徴

▼資産運用に向く人は「悩む前に行動」行動力のある人は、「失敗したらどうしよう」と悩む前に行動に移しています。そして経験から学び、また次の行動に移します。あれこれ悩むより、取りあえず行動して成功や失敗から学んだ方が早いという思考パターンです。このような人は「直感」で動くので、「直感力」も鍛えられます。資産運用は誰もが成功するわけではなく、ある程度センスや才能も必要で、値動きの早い金融の世界ではこのような行動力や直感力というのはとても大事です。

しかし、どんなに資産運用の勉強をしても、初めの一歩を踏み出すには勇気のいることです。自転車に乗る時も最初からスムーズに乗れるわけではなく、何度も失敗と成功を繰り返しながら次第に上手になっていきます。資産運用の世界も小さな失敗と成功を繰り返すことで経験値を積み、直感力や判断力を養い、自分なりの投資手法というものを作り上げていくものなのです。

▼資産運用に向かない人は「行動できない」資産運用の勉強をしても、やっぱり自分には向かない、興味がわかないと、実際にお金を投じない人は少なくありません。それもひとつの選択で、行動できないのは向かない証拠だと思います。自分が資産運用に向くか、向かないかは、実際にお金を投じてみればよく分かります。少額で始めてみて、やっぱり自分には向かない、興味がわかないとなれば、早目の撤退は賢明です。
(文:二宮 清子(マネーガイド))