住宅ローン控除を適用するためには、いろいろな要件を満たさなければなりません。住宅ローン控除等について誤りがあった、3つのケースを紹介します

国税庁の発表は?住宅ローン減税のミスとは?そもそも何が問題なの?

国税庁の発表 によると、住宅借入金等特別控除(以下:住宅ローン控除)に関して、平成25年分から平成28年分までの所得税の確定申告書を提出した人のうち、最大で約1万4,500人について申告誤りの是正が必要であることが判明したとのことです。

住宅ローン控除を適用するためには、いろいろな要件を満たさなければなりませんし、決まった方法により控除額を計算しなければならないのですが、今回、住宅ローン控除等について、次の3つのケースで誤りが見つかりました。

【ケース1】住宅ローン控除と贈与税の住宅取得等資金の贈与の特例を受けた

住宅ローン控除と贈与税の住宅取得等資金の贈与の特例について、あわせて適用を受けた場合の住宅ローン控除額の計算に誤りがあったようです。

新築や購入等した家屋を居住の用に供した年分又はその前年分において、その家屋を取得するにあたり贈与を受け、その受贈額について贈与税の住宅取得等資金の贈与の特例の適用を受け、かつ、その家屋について住宅ローン控除の適用を受けるときは、住宅ローン控除額の計算上、贈与の特例の適用を受けた受贈額を家屋の取得価額等から差し引く必要があるにもかかわらず、誤ってその減算をしていなかったというものです(国税庁HPより)。

3,500万円のマンションを購入した場合で、親から500万円の贈与を受け、住宅ローンを3,200万円(年末残高3,100万円)組んだ場合。

親からの贈与がなければ、「購入金額 3,500万円 > 住宅ローン(残高) 3,100万円」 のため、3,100万円をもとに計算することになります。

ところが、親からの贈与があり、住宅取得等資金の贈与の特例を受けていると、「購入金額3,500万円 - 親からの贈与額 500万円 = 3,000万円 < 住宅ローン(残高) 3,100万円」となり、3,000万円をもとに計算するほうが正しいということになります。結果、100万円が過大となり、その1%の10,000円が過大控除(還付)となっていることになります。

【ケース2】住宅ローン控除と居住用財産譲渡の特例との重複

住宅ローン控除と居住用財産を譲渡した場合などの、譲渡所得の課税の特例との重複適用があったようです。

新築や購入等した家屋を居住の用に供した年分及びその前後2年分ずつの計5年分の間に、居住用財産を譲渡した場合などの譲渡所得の課税の特例の適用を受けた場合には、その家屋について住宅ローン控除の適用を受けることができないにもかかわらず、適用を受けていたというもの(国税庁HPより)。

これは単純に、住宅ローン控除の適用ができないのに適用してしまったケースなので、適用を受けた住宅ローン控除全額が過大控除(還付)となっていることになります。

なお、居住用財産を譲渡した場合などの譲渡所得の課税の特例は、主に以下のとおりです。

・居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法第31条の3第1項)
・居住用財産の譲渡所得の特別控除(措法第35条第1項(同条第3項の規定により適用する場合を除きます。))
・特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法第36条の2、措法第36条の5)

【ケース3】年収2000万超の人が直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税の特例の適用ミス

贈与税の住宅取得等資金の贈与の特例のうち、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の、贈与税の非課税の特例の適用における所得要件の確認もれもあったようです。

国税庁HPによると、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例については、その適用を受ける年分の所得税の合計所得金額が2,000万円超である納税者は、その適用を受けることができないにもかかわらず、誤って適用を受けていたとのことです。

これは、住宅ローン控除ではなく贈与税の話です。合計所得金額が2,000万円超の人は、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の、贈与税の非課税の特例を適用できないのに、適用してしまったということです。

今後の対応は?

国税庁HPによると、修正が必要と見込まれる納税者には、所轄の税務署から申告内容を見直し、申告誤りのあった内容の是正と不足分の税額の納付を行うように連絡がされるようです。税務署から連絡があった場合には、誤りがないかどうかを確認しましょう。

住宅ローン控除で注意すべきは?

税金を計算する際には、さまざまな要件等が存在します。その要件を見落としてしまいますと、のちのち、想定外の納税が発生してしまうケースも珍しくありません。本件においては、贈与税の特例を適用した方がよいのか、贈与額はいくらにした方がよいのか、住宅ローンはいくらいにした方がよいのか、など、専門家と共に、タックスプランニングを十分に検討しておくことをお勧め致します。
(文:坂口 猛(マネーガイド))